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宮ちゃんのかつお節づくり体験記 かつおぶしができるまで その1:市場篇

このサイトのデザイン担当の宮ちゃんがかつお節づくりを体験!

『昔ながらの製法にこだわる、やまじゅうさんの工房での体験の様子と、かつお節がどのように作られるのか、わたくしこと宮ちゃんがレポートします。是非読んでみてくださいね。』
やまじゅうのかつお節が、どのように作られているのか、興味のある方は、この体験記を通 じてお解りいただけると思います。

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その1:市場篇
その2:生切り(なまぎり)篇
■その3:焙乾(ばいかん)篇

※1,2,3と順番に読んでくださいね。

宮ちゃんのかつお節づくり体験記 かつおぶしができるまで

その3:工場での生切り体験・焙乾篇

このボタンがある所では、クリックすると関連する写 真が御覧になれます。

▲やまじゅうさんの指導でT氏がトライ!

▲小生ただいま格闘中!

さて、ここまで、取材に集中していたのですが、我々も実際にかつお節つくりを体験することになりました。私とT氏は、さっそく前掛けをお借りして、腕まくりして、生切りに挑戦です。まずは、T氏から。やまじゅうさんに指導を受けながらの挑戦です。やはり、初めてということもあってか、おっかなびっくり包丁を動かしますが、T氏は、かなり器用なのか、上手い具合に三枚おろしに成功しました。そして次に自分の番です。結構魚をおろす事には慣れているつもりなのですが、かつおを切る包丁がとても長いので、いったい、刃のどこをどう使ったら良いのか解りません。腹の部分を切って内臓を取るところをクリアーして、つぎに背鰭取りです。皮と肉の間に、刃先を入れて皮を剥がすように刃先を進めるのですが、刃先が眼に見えないので、包丁から手に伝わってくる感覚だけが頼りです。多少ビビリながら包丁を動かしなんとか背鰭も取れました。結構きれいに皮がむけるので、気持ちよかったです。つぎに三枚おろしです。まず、肉と背骨の間に切れ目を入れて、三枚に卸しやすくするのですが、これは、難しい。切っている間、刃がどこを通 っているのか、全然解りません。恐ろしいことにならなければ良いのですが。そして、最後に三枚におろす行程です。緊張がピークに達してきました。でも、一気に卸さないとかえって刃が中骨にひっかかってしまいます。覚悟を決めて刃をふりおろします。一応かっこだけでもと、包丁でトンとまな板を叩いてフィニッシュです。おっ、案外上手いじゃないですか。もう半身もこの調子で、一気にフィニッシュ。肩にたまっていた力がフッと抜けます。汗かいちゃいました。あまり細かいところまでは解りませんが、なかなか上手くいったんではないでしょうか?汗をかく程の緊張感が、結構気持ち良かったですよ。あと、何本か切らせてもらいましたが、訳のわからないまま切っていた感じです。指導してくださったやまじゅうさんは、手を切らないか心配でドキドキしていたとのことでした。そんなこと、あとで聞いたら、今になって恐ろしい気分になってきました。

▲音がするくらいカチカチ!

さて、ここで、かつお節製造行程の取材に戻ります。つぎの行程は、焙乾(バイカン)といって、ようは、燻し(いぶし)ながら乾燥させる行程です。聞き慣れた言葉でいうと、薫製をつくる時の燻しに似ていると思われます。ただすごいなあと驚かされたのは、この燻しの行程を終えた、かつお節は、通 常の薫製品とは違って非常にカチカチで、節同士で叩きあうと、コンコンと良い音がするくらいに乾燥されているのです。とても、普段われわれが食べているかつお節(ほんとはけずり節と、言うべきでしょう)からは、想像もつかない固さです。なぜなんでしょうか?答えは、そのように固くなるまで、乾燥させないと、きれいなけずり花(ようは、木材でいうかんな屑のような状態。へんな例えですいません。)にならないと、いうことだそうです。ただ、もともと保存食として作られたかつお節ですので、長期間保存に耐えるように強く乾燥したのが始まりだったそうなのですが、さらに、クヌギクリックすると写真が開きますの薪で燻すことにより、かつお節独特の燻しの香りが造り出されて、さらに、真っ黒になった表面 の成分には、酸化を防ぐ成分も含まれているとのことでした。

▲手火山式の焙乾炉、手前の列です。

▲燻しの煙りで白っぽい絵になりました

▲上下均一に火が当たるよう入れ替え中

さて、話を現場に戻しましょう。やまじゅうさんの工房では、焙乾の行程が二つに別 れています。最初に、やまじゅうさんの一番の特徴でもある、手火山式(てびやま)の焙乾行程があって、つぎに、急造庫クリックすると写真が開きます(きゅうぞっこ)での焙乾行程を経て、仕上がりとなります。まず、手火山ですが、やまじゅうさんが明治20年の創業以来こだわりつづけている焙乾の方法だそうで(えーと、約113年もの間だ続いているんですよ!)、非常に手間がかかるやり方です。前の行程である水骨抜きを終えた節は、この手火山の為のせいろ(木製でしぶい!)に並べられます。そして、ほぼ工場のまん中に位 置する手火山式の炉に積み上げられます。この日の場合、かつおのサイズが約4.5kgの物でしたので、一枚のせいろには、一尾から、4節とれることになるので、約4尾分の16本位 のの節が並べられますが、それを一つの炉に5枚ずつ積み重ねられ、8つある(見かけ上は、4つづつ炉が繋がっています。)炉に積まれて、薪で燻されます。流れ作業的に、前の行程を終えてせいろに並べられ、一つの炉に乗せる分がまとまると、さっそくやまじゅうさんの手によって薪に火が着けられ焙乾が開始されます。   やまじゅうさん曰く、水骨抜きを終えたばかりで、まだ、柔らかい状態の節に、この直火式の手火山で、燻すことにより、より強い香りを着けることができるのだそうです。さらに、直火で燻すことにより、強い熱がまんべんなく節に行き渡り、節の乾燥も均一に行われるのだそうです。最初に45分くらい燻した後、上下を入れ替えて、さらに40分位 様子をみながら燻すのだそうですが、火の調節には、非常に熟練を要し、その日の気温や湿度、薪の乾燥度合い、そして、さらに、魚の大きさと脂肪の有る無しなど、さまざまな条件から判断して火ぶくれと言って、過度の高温による過熱によって、節の表面 が膨れてしまうことの無いように、火加減に注意しながら、火ぶくれ寸前の高温で燻しを行い、より香り高いかつお節の製造をめざしているのだそうです。最近良く、だしやめんつゆのコマーシャルに、「直火焼きかつお」というキャッチフレーズが使われますが、これは、手火山式の焙乾で作られる節のような、強い燻しの香りを求めて、製造方法が研究されているのだそうです。どうも、現代の消費者の味覚には、この強い燻しの香りが欠かせないということの証なのではないでしょうか。やまじゅうさんのかつお節が、多くのそば屋さんや料理屋さんで使われている理由が、ひとつ判ったような気がします。  余談ですが、この手火山を終えた節ですが、適度に水分が飛んで、締まったうえに、燻しの香りもあって、そのまま薄くスライスして、食べると、これがまた旨いんですよ。私は、醤油とマヨネーズを付けて食べるのが好きです。ホントに、余談でした。

▲上に見える部分が1階です

▲手火山から急造庫へ、せいろ替え

▲入れ替え作業中、頭上注意!

さて最後は、急造庫(きゅうぞっこ)での焙乾行程です。最後と言っても、この行程が非常に長いのです。というか、日数がかかるのです。まずは、急造庫について説明を受けました。まず、驚くのは、ようは、部屋がまるごと薫製室になっているんですが、それも、1階から4階まで、屋根の裏まで、使って焙乾が行われるんです。1階の地面 は、土間のようになっていて、薪が炊かれます。人が腰を曲げて入れるほどの空間なのですが、その頭上に、鉄の格子状の床?があって、煙りと熱が上に伝わるようになっています。そしてさらに、2階、3階、4階と屋根うらまで空間が続きます。2棟つながりになっていて、計8室あることになるそうです。この部屋に、鉄のせいろに並べられた節を重ねて、燻す訳ですが、約25から30日の間、燻されたり、あん蒸といって、火を炊かない状態で、節の水分の均一化をはかる行程をくり返して、荒本節というかつお節が出来上がるのだそうです。手火山で燻された節は、まず1階に入れられ、そこで、1日5時間位 かけて燻されるのだそうですが、途中、火の入り具合を見ながら、薪の炊き方を調節してクリックすると写真が開きます燻すのだそうです。そのあと、自然にじっくりさまして、あと、2日間同じことを繰り返し、次の新しい節を1階に入れるため、順々に、上の階に上げて、また、火入れ、戻し(あん蒸)を繰り返すのだそうです。ただし、一度中に入れたら、最後まで入れっぱなしなんてことは無いのだそうで、上の階に上げる時には、乾燥の度合いをチェックして、乾燥の弱い節は、さらに下の階で燻しを続けるのだそうです。この節の入れ替え作業によって、広い急造庫の中で、より均等に節の乾燥が行われるかが決まるのだそうで、より良く、燻しが、一本一本の節に加えられるよう、手間を惜しまず、手をかけるのだそうです。この節の入れ替え作業自体、天井の低い中で、しゃがんで行われる作業で、非常に大変な作業だと思いました。わたしも、中に入れてもらいましたが、しゃがみながら、一枚5kg程あるせいろを移動させるのは、とてもつらいことが解りました。腰にきますね。そして、なによりも、お話を聞いて感じたことは、この手入れ作業の段取りの大変さではないでしょうか。私だったら、どこにどの段階の節があるのか、解らなくなってしまいそうです。   こうして、生切りから、一月あまりの期間を経て、出来上がった節を荒本節(あらほんぶし)と呼ぶのだそうです。この段階で乾燥の進んだ節の重量 は、原料のかつおの約18%までになっているとのことです。

▲これが荒本節です。

やまじゅうさんでは、この荒本節を、けずり節の原料として、使っているそうですが、一般 的にかつお節というと、かびの着いた節を思い起こすのではないでしょうか。かび着けされた節のことを「本枯節」(ほんがれぶし)と呼ぶそうです。この本枯節を作るには、荒本節の表面 に付着したタール分を削り落とし、そして木箱に入れて、室(むろ)という湿度の高い部屋の中で、節の表面 にかびを発生させ、それを陽に干して、かびを落とす行程を4、5回くりかえし、7~8週間かけて仕上げるのだそうです。かびの力を借りて、さらに、かつお節の水分や脂肪を吸い出させ、また、かつお節独特の香りを作りだすのだそうです。昔、家庭で子供やおばあちゃんが削っていたかつお節が、この本枯節なのだそうです。ただ、このかび着けの行程自体、天候や技術に大きく左右されるので、やまじゅうさん曰く、「へたな本枯節には、決して負けない節を作っている自信が あります。」と、いうことです。さらに、この日本の伝統とも言える、本枯節についても、「どうしても、夏場に陽に当てて作らないと良い本枯節ができないんです。」ということから、夏期だけ限定で、本枯節の製造も行う予定だとのことでした。本枯節の製造の様子も、是非レポートできればと、興味津々です。

さて、ここまでで、やまじゅうさんのかつお節造りの体験記は、終わりです。その製造の様子をお伝えするための体験、取材を通 じて、全ての行程ともに、伝統食品ならではの職人の技によって、かつお節造りが成り立っていることが、良く解ったような気がします。「手をかける」という言葉がありますが、まさに最初から最後まで、ひとつひとつの節に手をかけて製造されてる様は、仕事だからといった言葉以上の、かつお節に対する愛情すら感じさせてもらったような気がします。さらに、肉体的にも大変な作業を経て造りだされる、このかつお節です。日本人の心に染み付いた庶民の味、かつお節を、もっとしっかり味わい続けたいと思いました。そして、日本人の伝統の技としてこれからも長く伝えられていって欲しいと思いました。やまじゅうの皆さんには、これからも、体に気をつけて、美味しいかつお節造りに励んでいただきたいと思います。

これで今回の体験記は終わりです。最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。また、次回のレポートをお楽しみに。

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